• 宮﨑 秀彦

まだ消耗戦してるの?機動戦との違い。

最終更新: 2019年8月13日

 「まだ東京で消耗してるの?」で一時期ネット界の話題をさらったイケダハヤト氏。東京から高知へ移住し、働き方という切り口で人々が注目する過激な意見で注目を集め、インフルエンサーという戦略的ポジションを獲得しました。Twitterの拡散性を有効活用した機動戦であったと思います。ちょうど今日書かれたご自身のブログにも書かれていますね。


 興味深いのは「人々の価値観が揺らいでおり、摩擦熱が起きやすかったんです。で、炎上すると。」というコメントです。これは戦争の本質と機動戦を的確にとらえています。


 海兵隊の哲学をまとめた「ウォーファイティング」によれば、戦争とは人の意志と意志の衝突です。そこから生じるものは摩擦であり、心理的かつ物理的な混乱を生みだします。相手の最も弱い部分で摩擦を意図的に起こし、混乱させ、状況の主導権を握るのが機動戦です。イケダハヤト氏の場合、戦略目的であるインフルエンサーというポジションを獲得するために、戦術と作戦の両方をこなしているという点が驚異的です。


【戦術レベル】Twitterとブログを使いこなす

【作戦レベル】Twitterという拡散性が高い場所を戦闘エリアに設定。SNSが流行り価値観が均質化して摩擦が起きやすい時期を設定。「働き方」という摩擦が起きやすいネタを戦闘条件に指定。


 さて、この機動戦は、消耗戦との対比によって良く理解できます。イケダハヤト氏で実証されているように、マーケティングにも役立つ考え方ですので、是非参考にしてみてください。


戦争の焦点

【消耗戦】戦闘

【機動戦】敵の結束力


消耗戦では戦力を如何に削るかが焦点です。機動戦では敵を一つのシステムと捉え、精神・道徳・身体・質などのうち、弱点に焦点を絞り破壊することで機能停止を狙います。



優位性

【消耗戦】軍事能力と計画

【機動戦】信頼、イノベーション、スピード


消耗戦は物量と、それを運用することで勝ちます。一方機動戦はOODAを用いて矢継ぎ早に行動を起こし、状況変化のスピードで敵を混乱させて勝ちます。TwitterはとてもOODAに適したツールと言えます。



手段

【消耗戦】敵の戦力と作戦遂行力の破壊

【機動戦】敵の「勝てない」という認識の創出


戦争は意志と意志の衝突ですので、意志を起こせない状態にできれば勝利できます。イケハヤ氏のインフルエンサーマーケティングで言えば、無視される事が負けですので、「注目せざるを得ない」と思わせたら勝ちです。



性質

【消耗戦】階層的

【機動戦】ネットワーク的


機動戦では最前線で意思決定を行います。各部隊が主体的に行動し、状況変化に合わせて随時連携して戦術・作戦を適応させながら実行します。



スタイル

【消耗戦】全体的、中央集権的、競争的、指示的、標準化

【機動戦】分権的、自立分散的、協働的、適応的、独自性


機動戦は、自立分散でありながら協働という所に注目です。これが自立のみでは成立しません。それぞれの部隊が1つの目的に向かって協働しなければ、力が分散してしまい、逆に弱みとなります。



目標

【消耗戦】敵の戦力の破壊

【機動戦】新しいパラダイムの創造


機動戦は、戦いのルールそのものを変える事を狙います。例えば海兵隊は敵の1000人に対して、3人のライフルマンと1台の攻撃機で勝利します。敵が想像もつかない効果的な方法を生み出す事が目標になります。



要件

【消耗戦】大量の火力、技術、工業力、中央制御

【機動戦】信頼、プロフェッショナリズム、個人のリーダーシップ


機動戦は人間中心の考え方であることが分かります。機動戦で用いられる兵器は、あくまで人間をサポートするためと考えられています。



リスク

【消耗戦】不均衡の脅威、副次的損害、長期化、膠着、死傷者の増加

【機動戦】個人の率先力、モラルの高さ、正確な状況判断、創造的な対応力、組織全体への浸透の難しさ


人間中心であるため、個人の能力に依存します。このため、採用・育成・知を共有し創造する場作りが課題になると考えられます。

 海兵隊では、訓練生の採用担当になるのは出世コースだそうです。これは優秀なミドル(士官・下士官)を見て、そうなりたいと思わせる事と、優秀なリーダーシップを持つ人材を見極める直観力を養うという2つの意味があるそうです。


 上記のとおり、機動戦のリスクは人材の質です。そこに最も優秀な人材を投入するという海兵隊の方針は理にかなっており、機動戦を成功率を高める重要なポイントと思われます。また、日本だと人材配置を静的なものとして考えがちですが、キャリアパスという動的なプロセスと捉えると、優秀な人材を一時的に本業から外すことにも大きな意味を与えることができます。この様に、行動によって、二項対立の中からより良い解決策を見出すことが機動性を高める思考法です。


 如何でしたでしょうか?消耗戦→機動戦の意味と困難さを少しご理解頂けたかと思います。ご覧いただきありがとうございました!


消耗戦と機動戦の対比については、野中郁次郎一橋大学名誉教授の「知的機動力の本質」を元に記事を作成致しました。



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