• 宮﨑 秀彦

なぜ日本人は空気に左右されるのか?

 積ん読していた『失敗の本質』を読み始めた所、偶然にも読売ジャイアンツ清水さんのチームマネジメントのお話と、PDCA&OODAの話がMIXされていましたのでご紹介します!


本書のサブタイトルは「なぜ日本人は空気に左右されるのか?」。


いくつかの失敗パターンが取り上げられていますが、日本が太平洋戦争に突入する前の満州と外モンゴルの国境で起きたノモンハン事件を取り上げたいと思います。


関東軍は満州に駐留している「軍‘」ですので、戦闘組織です。本来であれば不確実な状況に強いOODA型のはずですが、満州の政治・経済へ深く入り込む過程で統治組織へ変化していきました。統治とは合理化・効率化なので、安定的な状況下で計画に基づいて実行するPDCA型に変わっていきました。


 関東軍が成果を上げてくれるので、上部組織である帝国陸軍中央の参謀本部も現地に任せます。最前線のプライドもあって、関東軍には中央への対等な意識が生まれ、中央は現地感情に配慮するようになります。

 この点については「首脳部が選手の意見に流されるようになったら緊張感が失われチーム意識がなくなり勝てなくなる」という、清水さんのお話が思い出されます。


 国境地帯では小競り合いが頻発するようになり、紛争の危険が高まります。血気盛んな関東軍は紛争の際は一気にソ連を叩く事を考えプランを作ります。しかしPDCAでうまく回っていたのに急に紛争の話をされたので、中央は思考停止し判断を放置します。安定が続いたため首脳部は決断ができない状態に陥っていたのです。


 一方、関東軍はプランを作ったもののOODAの最初のO、Observe(観察)を十分にしておらず、こちらが圧倒的有利と考えていました。PDCAに慣れているので予測不能な事態への備え方が分からないのです。その裏で、ソ連は大規模で最新の戦力を着々と動員していました。

 紛争が始まると同時に、ソ連軍の圧倒的な物量により関東軍はコテンパンにされます。そこで撤退すれば良いのですが、合理性よりも「死んだ英霊に申し訳が立たないので戦うべき!」という精神論が優先され戦闘が続行されました。中央は戦闘を止めたかったのですが、関東軍の感情に遠慮して強く言えません。これが戦火を拡大させ大規模な損害につながりました。


 軍はなんのためにあるのか?国民の生命財産を守るためであり、英霊のためではありません。しかし危機的な状況では非合理なことも合理的に見えてしまいます。その背景には、PDCA型が長期間安定して成果を上げていた時代の、互いの感情に配慮した人間関係がバイアスとして働いていたと考えられます。

 本書ではこの構造は戦後も残っていて、変化の時代が来たらこの問題は再現するだろうと予言されています。

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