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  • 宮﨑 秀彦

「分かる」仕組み

分かるとは何か? 


 分かったと思っても、「分かる」には広さとか深さがあるような気がしませんか?


 1を聞いて10を知る人もいれば、1を聞いて0.1しか分かってないという人もいるかと思います。今回は分かる仕組みについてご説明します。


 まず最初に覚えて頂きたい事は、「分かる」というのは感情です。なので「分かった気になる」というのは、「分かる」という事の意味そのままなのです。そして感情ですから、主観的体験であって個人差があります。全然理解していなくても、とても良く分かったと思う方もいれば、人より多く理解出来ていてもまだまだ分からないと思う方も居ます。


 したがって、もし誰かに説明をした時に「分かった!」と言われても、それは当てになりません。どの程度分かったのかをちゃんと聞いてあげるということが、相手への思いやりです。



分かる=分かつ


 「分かる」の語源は「分かつ」であり、これは区別するということです。いまご覧の方は、パソコンかスマホを見ていると思いますが、当然いま触っている物がパソコンなのかスマホなのかが分かっています。なぜ区別が付いているかと言えば、視覚や触覚から入っている情報と、記憶が結びついているからです。この様な形をしたものはパソコンであり、スマホであるという事が記憶されているので、分類する事ができます。


 では、iPadが出てきた時はどうでしたでしょうか?初めてあの形を見た時、これは一体なんなのだろう?と分からない気持ちになりませんでしたでしょうか?

「これは小さいパソコン?大きなスマホ?一体なんなんだ?」

記憶している言葉でうまく分類できないとき、モヤモヤして意識に昇ってきます。(この曲はロックなのか、ポップなのかとかそういう議論も、記憶で分類できないため起こりますよね)


 誰かが板のような形状で色々なアプリを使える端末をまとめて「タブレットPC」と命名します。すると、似たようなマシンを見ると「これはタブレットPC」だということで分類する事ができ、分かった!という気持ちになります。


 私は釣りが好きなので、形や模様、美味しさなどを記憶していて「わお!マゴチが釣れた!」と喜びます。さかなクンレベルになると、世界トップクラスの知識を持っているので、世界中の魚の細かい特徴を記憶していますし、食べられる魚であれば味覚で魚種を当てられます。


 この仕組みを一般化して説明すると、五感からの情報で違いを感じ取り、記憶心象(五感からの情報と意味などのセット)を使って、これは何かという事を分類する(同定する)という働きです。ですから、世界中の魚の情報を記憶心象として持っているさかなクンの場合、彼が同定できない魚が現れたとなれば、かなりの確率で新種なのです。



分かりあえない理由


 言葉だけをふわっと覚えていた場合、Kindleの様な電子書籍リーダーを見てもタブレットPCとして分類してしまいます。Kindleでは書籍を読む機能しかないのですが、「板のような形=タブレットPC」と記憶していると、誤りが発生します。


 本人は分かったつもりでも、他の人からみたら分かっていない状態とは、この様に記憶心象が正しくない場合に発生します。特に外来語や造語が氾濫している時代には、言葉だけを覚えて、意味を理解していないという事が多く発生します。人間はこの言葉を駆使してコミュニケーションを行いますので、認識のズレというのはますます大きくなります。


 人間には「価値観」「世界観」「常識」というものもあります。これは自分を取り巻く世界を主観的に再構成した記憶心象の集合体です。世代、バックグラウンド、専門領域などが違う人が会話するとコミュニケーションロスが発生するのは、お互いの記憶心象を共有できていないからなのです。



分かるを鍛えるには?


 まずは五感のセンサーを敏感にする必要があります。私は魚を全体的に見るのですが、さかなクンの場合は鱗の数まで数えたりします。これは視覚への集中力の違いです。では集中力をどうやったら高められるのかといえば、好意や興味です。ポジティブな感情によって、対象への感覚の集中力が高まることで「分かつ」能力が高まります


 センサーが高感度になれば、いままでの自分の記憶心象では同定ができない違いを発見でき、思考が働きます。例えば新しい特徴を持つ魚を見つけた場合には、違いを詳しく調べたり、他の魚と共通点を探してみたり、季節や生息地域などとの因果関係を探ったりするのです。そうして、何か新事実を発見した時に「分かった!」という気持ちになります。同時に、発見した新事実によって自身の記憶心象がアップデートされるのです。知識はこの様に拡張されていきます。

 こう考えると、本を読むだけでは中々知識が身につかないということも納得がいきます。また、「分かる」には終わりはないということも言えるかと思います。分かった!と思っても、次の分からない!がやってくる。しかし、それでも楽しめる事が見つけられたら本当に幸せな事だと思います。つまりさかなクンは最高にかっこいいという結論で締めさせて頂きます!


 今回は山鳥重氏の「わかるとはどういうことか」からご説明させて頂きました。

本書内では「分かるためのパターン」なども記載されており、理解力を高める思考法としても有用な情報が載っています。是非御覧くださいませ!

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